Scratchを用いたヴィジュアルプログラミングの前段階として、ゲームのアイデアの構想を行っていきます。
Scratchを用いたヴィジュアルプログラミングの前段階として、ゲームのアイデアの構想を行っていきます。
前回はScratchを用いて、簡単なアニメーションを作成した。ここでは主に「動き」に関する表現を行った。
前回用意したスタジオには全学生の作品が投稿されているので(はずなので)適宜参照し、気に入った作品があればお気に入りやコメントなどを自由にしてみよう。
今回の演習では引き続きScratchを利用して、自作のゲームづくりへと応用していく。
諸君らは、これまでさまざまなゲームで遊んできただろう。近年のゲームは内容が高度化・大規模化して遊ぶのにも時間や手間暇がかかるようになった。同時に、開発にも膨大なコストがかかるようになり、ゲームのジャンルも固定化されるようになっている。
一方で、ニッチ(大手がやらないような隙間的で、独創的な)なゲームは忘れられがちである。しかし、手作りだからこそ「こんなものがゲームになるとは」「でもなんだか引き込まれるね」と驚かされるような楽しさがある。Scratchは、子供でも作れるからこそ、そうした新しいゲームの発想を実現するためのプラットフォームでもある。
→以前バズった「密ですゲーム」(こういう手作りっぽさはニッチに含まれる)
とはいえ、いきなりゲームを考えろ、と言われても難しい。通常は自分が普段遊んでいるようなものが基準になるだろうし、見たこともないものを発想するのもハードルが高いだろう。そこで今回は強制発想法を取り入れる。アイデアを生み出すための発想法には、自由に考える「自由発想法」と、なんらかの制約を設けてそれを起点に発想を導く「強制発想法」に大別される。強制発想法では「オズボーンのチェックリスト」が有名だが、自分たちでワークシートをつくって特定のルールから発想することもできる。以下は、2021年度のネットワーク情報学部の卒業生が開発した、初心者向けのニッチなゲームを構想するためのワークシートである。
ワークシートをそれぞれの個人で2枚づつ受け取ります。近くの人と2人一組になってください。割り切れない場合は、3人でも大丈夫です。このワークは他者と協力して考えるゲームなので、一人は不可です。二人ペアで、二案以上考えます。細かい時間指示はしないので、以下の説明を読みながら、二人で進めていきましょう。このシートは高校生向けに開発したもので、およそ45分ほどを想定しています。
ふたりで「しりとり」をして、単語をつなげていきましょう。出てきた言葉を別々のワークシートに記載していきます。(同じ言葉を、自分のワークシートに書きます)
しりとりに出てくる言葉は、おそらく「名詞」が多いはずです。そして、ふたりとも知らない単語は出てきません。二人のペアの経験知からできた「データベース」となります。
しりとりが終わったら、よく見ると枠の近くに数字が書いてあります。それぞれの誕生日の日付をもとに、ひとつの単語を選んでください。その数字のすぐ隣りになっている上下左右の言葉を含めた5つから、ひとつのキーワードを選びます。自分で決めて構いません。
なお、ここから(ニッチな)ゲームにしていきますので、そのつもりで選んでください。どんな言葉になるにしても、二人で出した言葉なので責任もって引き受けましょう。
枠内にキーワードを書きます。
次に、そのキーワードのイメージを飛躍させてみましょう。「おかしな◯◯」と頭につけてみれば、◯◯がふつうではない状態をさまざまな角度から想像できるでしょう。どんな「おかしな◯◯」が考えられるか、数分二人で相談してみてください。これが第一の仕込みです。
昔の伝説のゲーム『パックマン』は、食べると逃げるというシンプルな動詞から発想されたと言われています。ゲームでは何をするのかの動詞が極めて重要です。とはいえ、動詞の種類を上げろ、と言われても固定観念に陥りがちです。そこで、中学校で習う英語の動詞の一覧を並べてみました。英語は日本語よりも意味がシャープで、単語それぞれが強くできています。動詞の一覧を眺めてみれば、さまざまなゲームの基盤になっていることがわかるはずです。視点を固定しないで、2分間、さまざまな単語をじっくりと眺めてみましょう。これが第二の仕込みです。
次に、第一の仕込みと第二の仕込みを合体させ、発想します。
ゲームはルールに基づいていますので、手短な言葉で表現することができます。
__を__して、__を__する
の型を用意しましたので、この型にあわせて単語で埋めてみましょう。
最初の枠は、第一の仕込みの言葉になります。
少々「てにをは」を変化させても構いません。
ここで大事なことですが、発想は、一般的な推論である、演繹や帰納とは異なり、仮説をうみだす別の型の推論によるものです。つまり方程式のように前から後ろに順番に考えて解を出すのではなく、前後の要素を並列的に捉えて想像する必要があります。想像力の魔法は、別々の方向から同時に発生します。例えば、まずぼんやりとしたビジュアルのイメージが頭に浮かんで、そこから言葉を見つけるという順番でアイデアが見つかったりもします。したがって、整理しすぎるよりも、ある程度の混沌状態を作り出したほうが発想が広がりやすいのです。「大喜利」などもそうですが、論理からは、大受けするようなネタは生まれません。今回は「正しいけどつまらない」ものよりも、「よくわからないけど面白い」ものを狙っていきましょう。
次に、もうすこしルールの細部を考えてみましょう。ゲームでは、コントロールできそうでコントロールできない、あるいはコントロールできなさそうでコントロールできる。そんなちょうどいい塩梅のときに、「ハマる」という感覚が生まれます。どう考えてもクリアできないようなゲームではなく、ちょうどいい難易度のルールを調整すべきでしょう。
さいごに、プレイヤーの側の視点に立って、どんな感情になるかを考えてみましょう。人間の感情は一定のルールがあります。この図はプルチックという人が考えたもので、感情の関係を図にマッピングしたものです。このゲームで遊んだ人は、どんな気持ちになるでしょうか。
ワークシートを埋め終わったら、もう一回見直してみましょう。面白くなりそうなアイデアにまとまっているようなら、Scratchの仕様を考慮した上でどのようなゲームとして具体化するかを考えてみてください。しっくりこないなら、次回演習まで自分たちで時間を見つけて再度トライしてみましょう。二枚あるうちのもう一枚のシートを使ってみてください。
今回のゲームはScratchを用いて短期間で実装するので、3Dでグリグリうごくような、開発の難易度が高いものは想定していません。適切な粒の大きさに調整して取り組みましょう。
時間が余ったなら、他の人達がどんなものを考えたを知るのも勉強になるので、classroomに投稿するなどして共有してみてください。
ゲームを含めたインタラクティブな表現を実現するためには、ある情況をどのように捉え、どう編集、提示するかがポイントになる。そこでその練習として「言葉の編集」を体験してみよう。みなさんのリアルな日常体験として、「大学」をお題にして、5, 7, 5, 7, 7の短歌を作りなさい。(※「大学」という言葉を直接歌の中に使わなくてもよい)